来年こそは 12月31日
昨年と同じタイトルです。
今年もとうとう大晦日。マジ早い。早すぎる。
コロナの世の中になって2年。
仕事が中止や延期が相次いで、暇が出来たように思うのに、それでも早い。
来年こそは、コロナ前に戻りたいものでやんす。
そうそう。改めまして、この時にも頑張ってくださっている医療関係の皆様に心から
感謝申し上げます。
さてさて。
お飾りさんもつけたし、めっちゃミニで簡単なおせちも用意したし……
あとは……
さぁ、今年も、だぁれも何とも思っていない池田政之の今年のベストスリーの発表で
やんす! ドンドンパフパフ!
今年、てか今月の18日、ついこの間やな、地元で新しくなった市民会館・オリナスホ
ールでトークショーに出ました。
俳優の中西良太さん、朝ドラ『だんだん』で有名な森脇京子さん、そして真打4代目
隅田川馬石師匠、あ、そやそや先日発表された文化庁芸術祭で馬石師匠が、演芸部門
で大賞を受賞されました。おめでとうございます。
18日の時点ではまだ発表されていなかったので。間に合ってれば、開場で全員でお祝
い出来たのに。とにかく、おめでとうございました!
トークショーはこんな感じです。
ボクがちょっと離れてるのはМCなので。(^O^)
休憩を挟んで約2時間のトークショー、ウケたウケたで一安心。終演後のアンケート
を見せてもらいました。メッチャ好評で、更に安心!
少しは地元に恩返しがで出来たかな。
これが第3位でぇす。
今年、ボクが特にショックを受けたことがあります。
キングオブコントとドラフトコント。
本来、漫才とはおかしな会話芸です。
特にボケの方が、ナンセンスというか、不条理というか、非現実というか、そんな奴
いねぇよというか、会話が頓珍漢というか、意思の疎通がズレまくりというか。
現実にはそんな奴いないし、そんなこと起こらないことを次々繰り出して、それに対
してツッコミがつっこむ。
たとえば、犬を見たボケが「あ、猫や」。ツッコミが「犬やがな」とつっこむ。
でも現実に猫を見て犬やと言う奴はいません。そんな奴いたら病院連れて行かんと。
そしてコントもそういう人物、世界を描いてきました。
コントとは、笑いを目的にした寸劇です。でもそこに描かれるのは、不条理な世界、
ナンセンスな世界、非現実な世界、そんな奴いねぇよの世界、はっきり言って笑いの
為なら何でもありの世界でした。
そこがコントと演劇の違いでした。
それが、今年のキングオブコント。
驚きました!
10組中8組が、具体的に言うと、ニッポンの社長とニューヨーク以外は、全組まっと
うな、現実に起こり得る世界で物語を構築していました。
それは、蛙亭のホムンクルスのネタつまりはSFであっても、SFだとすれば成立し
ているのです。
つまりは、コントが従来のナンセンスより、現実の演劇にグッと近づいたのです。
更に、そこに人間の悲哀や哀愁まで描こうとしている作品もみられました。
ドラフトコントではもっと顕著でした。
なにせ、キングオブコント(時間4分) の倍のネタ時間。
5組の内、小峠チーム以外は、全て演劇的でした。
特にすごかったのが大悟チーム。
明かりがつくと、大悟クンが志村さん譲りの白鳥の衣装(白鳥の首がちんちんから伸び
てる例の奴)にハゲズラとそのメイク。
シソンヌ長谷川クンがお公家さんメイクにアカレンジャーの衣装でズボンをずらして
ピンクのパンツむき出し。
サーヤがモモレンジャーでお色気ポーズ。
怪人役の盛山クンが自分の私服で鏡に半身映してヘラヘラ。
いやいやいや、不条理丸出しの出オチポーズ。
ところがこれは実はコントの稽古風景。
リーダーの大悟クンが、従来の、不条理ナンセンスのギャグをどんどんと支持してい
きます。その都度、長谷川クンが「いつの時代ですか」「古すぎますよ」「みんな芸
人人生今日で終わりますよ」と拒否をしていく。
つまり、キングオブコントで顕著となった、コントに対する若い人の考え方、従来の
概念との決別、それそのものをネタにしていたのです。
ボクは、演劇人です。そしてその多くが喜劇と携わっています。
更に、NLTは50年以上コメディをやってきました。
その中にはオムニバスと称して、いくつもの短編で構成されているものもあります。
ロベール・トマも、ニール・サイモンも、アラン・エイクボーンも書いています。
そしてその多くはコント的です。だって短編だからチャンチャンで終わる物ばかりで
すもの。
はっきり言います。
コントが、演劇との境界線を越えてこちら側に来られたら、勝てません。少なくとも
笑いを目的としたファルスは……
たった4分で爆笑に次ぐ爆笑を、明かりがついたその瞬間に爆笑をさらう、なんて、
従来の演劇には無理です。ファルスの何割かは「その程度?」「たいしたことないな
ぁ」な本になってしまうでしょうね。
もう『シャンブルマンダリン(ホテルZOO)』も『名医先生』も『ばらばら』も、ボク
的には無理です。あの程度じゃ笑えませんもの。昭和のコントとは住み分けが出来て
いても、令和のコントには勝てませんもの。
では人間喜劇はどうか?
人間喜劇は、コントとはフィールドがまるで違うので問題はないでしょう。でも人間
喜劇そのものが古くなってきているのも事実なんです。なぜか。
現在を舞台に創ればいいのですが、そこに描かれる人間の問題は、もうほとんど既に
書かれてしまっている。まず昔の名作に勝てない。じゃあ、昔の名作を取り上げてれ
ば、となるのですが、それが現代劇であればあるほど古臭い印象はぬぐえない。近代
も昭和も、古臭い……
この問題が、少なくともボクの中で出てきたのは、人間喜劇に対してはここ7、8年
くらいでしょうか。 で、ファルスは今年。
ではどうすれば。今必死に考えています。
とにかく、コントの変化によるコメディの危機。
このショック。この危機感。
今年の第2位です。
あ、もう1つ。
錦鯉の活躍、すごいですねぇ。
なんかもうネタというより、テクニックというより、あ、勿論渡辺クンのツッコミの
力は素晴らしいですが、それ以上に、長谷川クンの人間力がものを言っているように
思えてなりません。
そう人間力。長い経験から出てくるポテンシャル。
それに関して更にもう1つ。
先日高橋佑一郎クンや原田大二郎さんの『プラザ・スイート』を観てきました。
はっきり言って、ニール・サイモンってそんなに面白い? ニール・サイモン信奉者の
方に怒られるな。すみません。
実はバラすと、ニール・サイモンって作り手側はなぜか触手が伸びる作家なんです。
有名だし、出演者も少ないし。でも、ボクは大笑いしたのは過去1本しかありませ
ん。
ニール・サイモンの本はシチュエーションコメディの特徴が最も出ている喜劇なので
すが、だからこそ実は日本人には合いにくいのですよ。その辺りのことは又いずれキ
ッチリ論じますね。1時間以上の芝居になると、途中で20分くらい居眠りしても問題
がないのがニール・サイモンの特徴ですわ。物語が進まないから。
(あ、三谷さんは違いますよ。彼はニール・サイモン好きを公言なさってますが、彼
の作品は、ニール・サイモンより更に進化して、万人にウケるシチュエーションコメ
ディを作り上げてはりますものね。その辺のことも又いずれ)
さぁ、そんな中にあって原田さんの「フォレスト・ヒルズの客」は笑った笑った。
実は、もうバラしてもいいですよね。始まって少しして、トラブルがあったんです。
物語はこうです。娘の結婚式。階下の会場では披露宴が始まっている。なのに娘は上
の階の部屋のバスルームに中から鍵をかけて閉じこもってしまっている。両親が何と
か引っ張り出そうと悪戦苦闘、あの手この手で大奮闘する。
約1時間の上演時間の間、父と母の大奮闘の二人芝居。1時間ずっと2人が喋りっぱ
なし。ところが始まって少しして原田さんのセリフが飛んだ。奥さん役の針谷理繪子
さんも何とか話を繋げようとセリフを繰り返し……観客もハラハラ……
ところがところが、何とか乗り切った途端、俄然原田さんが面白くなった。
これ以降セリフはバッチリでしたが、本来娘が出てこなくって、慌てに慌ててパニッ
ク起こしちゃってる親父の役です。セリフが飛んで慌てた原田さんとイメージが一致
しちゃった。なので、もう原田さんが何を言おうと何をしようと、奥さんが長ゼリを
喋っている間黙って見つめて聞いているだけで面白い! 錯乱した親父が「俺は何を言
おうとしてんだ!」 奥さん「多分こうじゃないの!」 もう最高!
ボク達にも現実に今言おうとしたことを「あれ、なんだっけ?」となったり、慌てに
慌ててると、何をしようとしていたのか分からなくなることって、過去あったと思い
ます。つまりこの芝居自体が、一生の内で滅多にないパニック場になったのです。
ものすごいリアリティ! もう何をやっても客は笑う。あのおかしな親父が原田さんに
憑依したのか、原田さんが身も心も親父になっちゃったのか。
とにかく爆笑爆笑で。こんなに笑ったニール・サイモンは初めてでした。ボクの少し
前に座っていたNLTの小泉も吉越も、身体を折って笑ってました。
それほど原田さん素晴らしかった!
その時思ったんです。これってまさか演出? まさかのマッチポンプ? もしそうなら
これ程危険な賭けはありません。ありえない。
で結論。これは原田さんの人間力だ。
舞台は生ものです。誰だってセリフが飛ぶことはある。原田さんはその親父と同化す
ることで乗り切られた。というよりものすごいリアリティを手に入れて、後は原田さ
んの、長年のキャリアからくる俳優力、つまりはポテンシャル、つまりは人間力で素
晴らしい舞台になさったのだ。
事実、第二文芸部の山﨑がボクたちの一つ前の回を見て、「普通の『プラザ・スイー
ト』でしたよ」という感想。その通りだと思いますよ。 ニール・サイモンだもの。
ボク自身も観たことあります『プラザ・スイート』。ほとんど覚えていません。もっ
と面白く(笑えるように)なるのになぁと思ったような記憶が……
原田さんの人間力のお陰で、最高の『プラザ・スイート』になりました。
あ、高橋佑一郎クンの『ママロックの客』も良かったですよ。(^O^)
コメディはやはり脚本とそして俳優。当り前か。
令和のコントに負けない喜劇の本と、俳優の人間力。
作家・演出家として、改めて思った2021年でした。
でもってようやくの今年のベストワンです。
今年も第1位はコロナです。
これだけ引っ張って結局かい。でもやっぱりコロナです。
今現在は落ち着いてますが、今年も緊急事態宣言が出まくって、夏なんて東京で1日
5000人なんて日が。このままじゃ1日10000人になる、なんて言われてましたもの
ね。だから後半、中止と延期になっちった。
今年は
2月 NLT『我が友ドラキュラ』潤色
3月 名古屋御園座 里見浩太朗・純烈特別公演『水戸黄門~春に咲く花』脚本・演出
同 歌謡ステージ 里見浩太朗vs純烈 大いに歌う! 演出
6月 明治座 水森かおり特別公演『令嬢、難儀を引き受ける』作・演出
7月 大阪新歌舞伎座 同上
7月 名古屋御園座 細川たかし特別公演『あの海の向こうへ』作・演出
でした。
で8月以降は夏のコロナ猛威でなくなって……
なので、やっぱり今年もコロナです。
そして、来年こそ、治まってくれることを、第6波が来ないことを、オミクロン株が
たいしたことないことを、ひたすら祈っております。
では、今年の最後に、先日、新幹線の窓から撮った富士山で。
今年も、いろんな方にお世話になりました。
本当にありがとうございました。
来年も宜しくお願い致します。
それでは皆様、良いお年を。
2021年12月31日