見える景色が 6月12日
ようやく1冊読みました。
これです。道尾秀介氏の『N』
道尾氏は結構よく読んでます。一番好きなのはやっぱり『ラットマン』かなぁ。
「あなた自身が作る720通りの物語。全6景。読む順番で世界が変わる」
6つの短編集。それらはどれから読んでもOK。ま、普通そうやけど。
で、その順番で、読者が感じる印象が全て変わるというのです。
その景色は720通り。
つまりですね、6×5×4×3×2×1=720 という訳です。
これはすごいぞ。
てか、ボク自身も同じようなことを考えていたので、是非参考にと読んでみました。
ここからはネタバレ有りです。
でも、それはとある方式の問題で、一つ一つの短編はそれぞれ独立して完結し、かつ
出来栄えに影響はありません。
でも、ま、とりあえず未読の方はご遠慮くださいまし。
これはボクが勝手に「赤穂浪士方式」と呼んでいる方式でした。
ちなみに他にも「水戸黄門方式」というのもあります。
つまりですね、Nでは、同じ町で起こる6つの事件。更に同じ人物が何話かにカブっ
て出てきます。
赤穂浪士では、例えば一年間全50話でドラマが放送された時、まぁだいたい浅野内匠
頭が勅使供応役に決まったところから、松の廊下、赤穂城明け渡し、東下り、そして
討ち入り、切腹まで。
エピソードも47人分あるし、関わった人にもものすごいドラマがあるから、1年持つ
わけですね。
それらは時系列に沿って描かれます。
ですが、例えば「杉野十兵次と俵星玄蕃」「岡野金右衛門恋の絵図面取り」「赤垣源
蔵徳利の別れ」「毛利小平太はどこへ」……
これらはほぼ同時期に起こります。
毛利小平太。昔、天知茂さんがカッコよかった。労咳で雨に濡れて……
そういえば確か森岡も演ったな。
毛利は最後に脱落します。
それを描いた回が先に来るか後に来るかで、他の回はイメージが変わるわけです。
「これは誰に頼もう」「毛利かいいんじゃないか」「そうしよう」
この時、毛利がまだ仲間だと思っていたら何ともない会話です。
でも毛利が脱落する回が先に放送されていたら……ああ、毛利はもういないのに……
と我々視聴者はヤキモキするわけですわ。
同じ結末でも、描く順番一つで、景色が変えられるわけです。
これをボクは「赤穂浪士方式」と呼んでいるわけです。
それを小説でおやりになっていました。
氏お得意の深刻な短編集でした。(^O^)
2022年6月12日