屁理屈とおままごとの恋 3月14日

観劇 読書感想文

 

 

屁理屈とおままごとの恋。

 

これ、すごい誉め言葉です。

 

 

何がって?

 

 

その前に雨あがりの実家の庭です。

 

 

 

 

梅の花がほころび始めました。

 

春はもう直ぐです。

 

 

さて、本題。

 

法廷物でちょいと変わったミステリーを読みました。

 

法廷物というのかなぁ。

私的裁判ものというのかなぁ。

 

実はボクは、今秋、NLTで私的裁判もののコメディをやるもんだから

興味がわいてね。

 

あ、でも、ボクはもう脚本書いて、NLTに渡してしまいましたけどね。

 

 

 

 

これです。

 

円居挽氏の京都を舞台にした長編デビュー作。

 

これ、すごいですよ。

 

何をどういえばいいのだろう。

 

うまく言えないから、とりあえず粗筋でも書きますか。

 

  京都には古より貴族の間で〈双龍会〉という私的裁判が伝わっていた。

  富豪の孫・15歳の美少年・城坂論語は、怪我のため一時的に盲目となり、

  屋敷の離れで寝ている時、謎の女ルージュが表れ、その女と手を繋いだだけの

  状態で言葉を交わし、一生消えないほどの思いが心に残る。

  その同じ時、母屋では祖父が殺される。犯人はルージュなのか。

  だが少年が犯人と疑われる。少年の父と叔父は、祖父を病死として処理。

  少年と、ある約束を引き換えに。

  そして三年……

  少年は約束を破る。

  怒った叔父は少年を双龍会に訴え、少年は被告として裁かれることになる。

  ここに龍師と呼ばれる卓越した能力を持った検事役、弁護士役が登場し、

  双龍会の幕が上がるのであった。

  それは全て、少年のルージュ探しの旅の幕開きでもあった。

 

 

とまぁ、こんなところでしょうか。

 

この私的裁判の場面が、まぁすごい。

検事役の黄龍師、弁護士役の青龍師の息もつけない口先対決。

その弁論のまぁすごいロジック! まぁすごい屁理屈!

黒も白! そうとも、カラスは白い!!!

ドンデンドンデン又ドンデン! 一体いくつひっくり返すねん!

 

双龍会という奇しげな古式ゆかしい法廷劇の面白さ。

主役がぐるぐる変わるめまぐるしさ。

そして三年前の事件の真相と、ルージュの正体。

 

そしてそして、少年のおままごとのような恋のせつなさ。

 

 

いやぁ堪能しましたよ。

読み終えた瞬間、おいちゃんの耳元でアニメ『コクリコ坂から』の

テーマ曲「さよならの夏」が静かに鳴り始めましたよ。

 

作者の円居挽氏は京大推理小説研究会出身。なるほどね。

綾辻さん、有栖川さん、法月さんの後輩だそうです。

その新本格テイストをきちんと守り、さらにライトノベルズの香りも漂いまくり。

 

いやぁ、城坂論語とルージュのラストは、おいちゃん、もう一度17歳くらいに

戻ってみたいと思っちまったぜ。

 

おままごとのような恋。

 

こっばずかしくて、バカみたいだけど、だんだん年を重ねると

二度とできないそんな恋の風景に、キュンと来てしまった池田でした。

 

 

誉めてばかりやから、一つだけ文句を。

 

含蓄とペダントリーから派生し矢継ぎ早に繰り出されるダジャレ的なギャグの洪水。

あれ笑えんで。おもろないで。

特に先輩龍師の瓶賀流さん、あんなに喋っても、ギャグのセンス、10点満点中

1点かな。いや0点やで。ぜんぜんおもんないイチビリやで。

何でか分かる? あれはお勉強なさった知識だけで作れるギャグやから。

笑いのセンスとは違うから。

 

さて、ルヴォワールシリーズは、この後『烏丸ルヴォワール』

『今出川ルヴォワール』と続いているようで、

間もなく『河原町ルヴォワール』も出るそうです。

 

読んでみよ。

 

皆様も是非。

 

でもこれ、読む人選ぶかもしれんなぁ。

 

 

 

さて、今、フジテレビの2時間ドラマ、片岡愛之助丈主演、高木彬光先生原作

『影なき女』、見終えました。

 

 

 

 

懐かしいなぁ。

 

高木彬光先生、大好きでした。

本格ミステリーの三大雄のお一人(あとの二人は横溝正史御大と鮎川哲也先生です)

 

本格ミステリーから出発なさって、社会派も、経済ミステリーも、歴史ミステリーも

時代小説も、何でもごされの方でした。

法廷物もモノにされていて、『破戒裁判』は傑作ですぞ!

 

 

この日記で2月25日「活字欠乏症の妙薬は密室」でも書いたけど、

ボクは密室派&不可能派なので特に好きなのは、『刺青殺人事件』『能面殺人事件』

『呪縛の家』『人形はなぜ殺される』『我が一向時代の犯罪』『狐の密室』

短編では『妖婦の宿』そして『影なき女』となります。

 

ベスト3は『人形はなぜ殺される』『能面殺人事件』『我が一向時代の犯罪』

短編はやはり鮎川先生の『赤い密室』と共にお手本の『妖婦の宿』ですね。

 

昔は角川文庫でいっぱい出てたのに、今では手に入りにくい大御所の代名詞

だった高木先生。でも最近復刊してきましたなぁ。ファンとしては僥倖です。

 

是非皆さん読んでください。

 

 

さて、愛ちゃんのドラマですが、ちょいと詳しく内容を見ようと思い、

フジテレビのホームページを覗きました。

 

そこでとんでもないミスを発見!

 

ホームページのドラマ解説に、このドラマの原作は1977年発表の『影なき女』。

とありました。

 

 

 

          見えにくくてすんません。一番下の行です。

 

 

違うよ。

 

影なき女はボクが生まれるずっと前に発表されてるで。

 

特に『妖婦の宿』と『影なき女』は戦後すぐに日本探偵作家クラブの新年例会で

行われていた犯人当てゲームに高木先生が書いた作品として有名で、

そのレベルの高さからすぐに世に発表されたというエピソードは

探偵小説ファンなら知ってて当然の薀蓄。

『影なき女』の発表年は1950年。雑誌掲載ですよ。

1977年は改めて文庫に収録された年。

ちなみにその2年前の1975年に僕がこづかいで買った密室アンソロジー

『13の密室』にすでに『影なき女』入ってるで。

 

 

この程度のことが……

プロデューサーにミステリー愛が足りないのでしょうか。

 

 

残念やなぁ……

 

 

 

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