わかり易さこそ 8月8日
資料が13冊ドンと。
歯を食いしばって読んでます。
あと、8冊。
で、チョイと一服。
遠藤周作氏が亡くなった後発見された戯曲をまとめられた『善人たち』をお取り寄せ
して読みました。
ちなみに遠藤周作先生は、先日亡くなられた岡田正子先生の義兄でらっしゃいます。
つまり岡田先生のお姉さまのご主人。
岡田先生が戦後のパリに住んでらした頃、日本から遊学されてきた遠藤氏と出会い、
日本のお姉様にご紹介の手紙を書かれたとのこと。
その辺りのいきさつは、まあ面白い!(^O^)
でも、その話は今日は関係ないので。(●^o^●)
むかしむかし、今から30年以上前、川口松太郎先生の7回忌に、ご家族が、戯曲選の
私本を出され、関係各位に配られました。
それが三越劇場にあって、ボク、川口先生の作品が大好きだったので、特に好きなの
が新派の『明治一代女』と『寒菊寒牡丹』かな。
他にも『鶴八鶴次郎』や『風流深川唄』や『遊女夕霧』や『男の花道』や……
その私本は8作品からなっていて、その中の『深川の鈴』と『月夜鴉』は観たことが
なかったので、読んでみようと三越さんにお願いして貸してもらいました。
その日はそれから名古屋だか大阪だかに行くことになっていて(なんせ30年前のこと
なので) 東京駅から新幹線に乗って一服ついて読み始めました。
あっという間に読めました。2冊で1時間かかってない。
まぁ簡単。
まぁわかり易い。
読んだ傍から忘れるほど。
でも主役の気持ちも、相手の気持ちもすごく良く分かる。
衝撃でした。
昔、初代の水谷八重子さんが「川口先生はうますぎるの。役者が芸をする隙まで書い
てくださっている」と仰ったそうです。
読んで、こういうことなのか……と思い、数日後、帰京し、三越さんへ返却に行った
とき、観ているお芝居も戯曲として読みたくて、全部読ませてもらいました。
観ているから分かる読み方。
ここで常磐津が流れる。ここで柝が入る。
巳之吉に帯を掴まれたお梅が、ここでもつれて、街灯に背中から当たって、雪がドド
っと落ちて鐘がゴーン。その瞬間大向こうが「水谷ぃ!」
唸りました。
実はボク、デビューからしばらくは、難解でレトリックのセリフの悲劇ばかり書いて
いて、勿論コメディなんて書いてなくて、だから当時をよく知る俳優さんからは、
「昔お前のセリフは難しかったのに、いつから簡単になったんだ?」とよく言われま
した。
その時からです。(●^o^●)
バーナード・ショウのように、読む戯曲を気取ってたのか、まぁ若かったし、でも、
やはり戯曲は上演時が完成時なのだと改めて思ったのです。 それでいて役者さんが
初読時に「なんやスッカスカの台本やなぁ」とは思わせない何か、深さやオーラが
ないといけない。
さて。
『善人たち』には3作品が入っています。
『善人たち』『切支丹大名・小西行長』『わたしが・棄てた・女』
文豪の戯曲はどれも読みやすい。それでいてストーリーも気持ちもよく分かる。
ボクも、改めて……一生勉強だ!
ちなみに、ボクのお勧めは、やはり表題作です。
でも、一番心に来たのは「わたしが・棄てた・女」です。こういうの、辛い……
2022年8月8日